遺言書には何を書いても良いができることは限られている

「遺言書」の内容に制限は無いので何を書いても構いませんが、
法的効力が及ぶ範囲いわゆる「できること」はある程度限られています。

では遺言でできることはどういったことなのか具体的に見ていきましょう。

目次

遺言でできることは3つ

遺言書に書いて法的効力が認められるのは大きく分けて
 ・身分に関すること
 ・相続について
 ・財産の処分
の3つです。

「相続」や「財産の処分」はよく知られていますが、
相続人の身分に関することも遺言で指定できます。

上記3つの事柄については遺言書に書かれていることに法的効力が発生するので、
相続人はその内容に従うことになります。

しかし上記3つ以外の事柄については遺言書に書いても構いませんが、
法的効力は無いので相続人は従う必要がありません。

故人の意思を尊重して、遺言書に書かれた法的効力の無い事柄も含めて従うことも
相続人の総意があれば可能です。

遺言でできる身分に関すること

遺言でできる「身分に関すること」として主に
 ・認知
 ・未成年後見人、後見監督人の指定
 ・祭祀継承者の指定
 ・遺言執行人の指定
の4つが挙げられます。

「認知」は、非嫡出子いわゆる妻以外の婚姻関係の無い女性の間にできた子供を
自分の子供として認めることです。

認知しなけば法的な親子関係は認められず、
亡くなった人と実際に親子関係にあっても相続人になれません。

遺言で認知すれば法的な親子関係が生じて非嫡出子が嫡出子となるので、
相続人の一人として名を連ねることになるのです。

「未成年後見人、後見監督人の指定」は、
自分が亡くなると親権者が居なくなる未成年が居る場合に行います。

後見人は親権者が居ない未成年の親代わりとして、
監督、教育、財産の管理などを適切に行う役割です。

後見監督人は後見人がその役割をちゃんと果たしているかを監督する役割を負い、
弁護士や司法書士など国家資格を持つ専門家が就くのが一般的です。

「祭祀継承者の指定」では、自分が亡くなった後に墓や仏壇などの祭具、家系図などを
維持管理する人を指定します。

「遺言執行人の指定」では、
遺言書の自分の書いた内容通りに執行してくれる人を指定することになります。

遺言執行人は指定しなくても良いですが、
指定しないと遺言書の執行には相続人の全員の同意が必要です。

遺言でできる相続について

遺言でできる「相続について」は主に
 ・相続割合の指定
 ・遺産分割方法の指定
 ・遺産分割の禁止
 ・相続人の廃除
などとなっています。

「相続割合の指定」は、
相続人それぞれがどういった割合で遺産を相続するかを指定することです。

通常は配偶者1/2、子供は残り1/2を頭割りですが、遺言では配偶者に2/3、
子供は残り1/3を頭割りと法定相続分とは違った相続割合を指定できます。

「遺産分割方法の指定」では、家と土地、現金は配偶者、
預貯金は子供といったように相続人それぞれがどの遺産を相続するかを指定します。

「遺産分割の禁止」は、
自分が亡くなった後一定期間相続人が遺産を分割するのを禁止することです。

遺言書で遺産分割が禁止できる期間は最大5年で、
5年を超えて禁止すると無効となってしまいます。

「相続人の廃除」は、
特定の人物を相続人から外す手続きを行うよう遺言執行人に指示することです。

一般的には遺言書の作成者が生前に家庭裁判所で手続きを行いますが、
遺言で亡くなった後に遺言執行人に廃除手続きをしてもらうこともできます。

生前に廃除した人物を再度相続人として復帰させることも遺言で可能です。

遺留分を無視した相続は遺言でもできない

遺言で相続割合を決めることもできますが、
「遺留分」を無視した相続割合にすることは遺言でもできません。

遺留分は法律で認められている相続人が最低限受け取れる相続割合のことで、
法定相続分の1/2です。

例えば相続人が配偶者と子供2人なら、
配偶者は1/4、子供はそれぞれ1/8が遺留分となります。

遺留分を無視した相続割合を遺言に記しても、
相続人は遺留分を請求して受け取る権利があるのです。

相続人が複数居るのに一人だけに遺産を全て相続させる、
遺産を全て自治体などに寄付するといったことは遺言でもできません。

遺言でできる財産の処分

遺言でできる「財産の処分」は
 ・財産の遺贈
 ・信託の決定
 ・生命保険金受取人の変更
などです。

「財産の遺贈」は遺産を相続人を含む他人に贈与することで、
法律上の相続権が無い親戚や友人などに遺産を譲ることもできます。

残されたペットの世話をする代わりに遺産の一部を譲るなど
条件を付けた遺贈も可能です。

国や自治体、慈善団体などへの遺産の寄付も遺贈に当たります。

「信託の決定」は、遺産の管理や処分などを特定の人物に任せることです。

弁護士や司法書士などの専門家、信託銀行の信託サービスなどを利用するのが
一般的となっています。

「生命保険金受取人の変更」は、
自分が被保険者として加入している生命保険金の受取人を変更することです。

相続人が受取人の変更を保険会社に通知、保険会社が遺言書の内容を審査して
問題が無ければ変更手続きが行われて保険金が支払われます。

配偶者から子供のような親族間の変更はもちろん、
保険商品によっては友人や慈善団体など第三者変更も可能です。

まとめ

遺言書の内容に制限は無く、
形式にさえ則っていれば何を書いても遺言書自体が無効になることはありません。

ただ遺言書でできることは法的に決まっているので、
遺言書に書いたこと全てが有効になるとは限らないです。

できることを分かった上で遺言書を作成しておけば、
自分が亡くなった後に相続などで遺族が揉める心配がありません。

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