「公正証書」を作る時にお世話になる「公証役場」ですが、名前は知っていても
どこにあるのかや具体的に何をする所なのかは知らないことも多いです。
では東京都杉並区の公証役場はどこにあるのか、
公証役場では何ができるのかなどを詳しく見ていきましょう。
杉並公証役場は荻窪駅の近く
杉並区の公証役場はJR荻窪駅の近く、徒歩1分のところにあります。
JR荻窪駅の北口から出るとバスやタクシーの乗り場があるロータリーが
目の前にあるので、駅を背にして「富士そば」や「KFC」のある左側に進みます。
ロータリーに沿って歩道を北側に進んだ先にある小さな横断歩道を渡り、
さらに左手に交番のある交差点を渡ってください。
交差点を渡ると正面に「ファミリーマート」があり、
ファミリーマートの左にネットカフェの入り口、さらにその左に「BOOKOFF」があります。
BOOKOFFが入っている「澁澤荻窪ビル」の4階に杉並公証役場が入っているのです。
BOOKOFFの店舗の左側が入口で、ビルの入口に「杉並公証役場 当ビル4階」と
書かれた白い看板がありますから、その看板を目印にしてください。
杉並公証役場のホームページに地図が掲載されているので、
そちらも参考にしてください。
(参照:https://www.kosyonin.jp/suginami/)
杉並区役所の中や近くに公証役場は無い
公証役場は公的機関なので、訪れたことがないと区役所の中や近くに公証役場がある
と勘違いするケースも少なくありません。
市区町村など自治体が公証役場を管轄しているわけではなく、
公証役場を管轄しているのは法務局ひいては法務省です。
公証役場が公的機関なのは間違いありませんが、市区町村とは直接的な関係は
無いので役所から離れた場所に公証役場があることが多いのです。
ちなみに杉並公証役場はJR荻窪駅の近くで、
杉並区役所は東京メトロ南阿佐ヶ谷の目の前にあります。
(参照:https://www.city.suginami.tokyo.jp/guide/annai/madoguchi/1004459.html)
杉並公証役場が入る澁澤荻窪ビルの前の道路沿いを南東方向に歩いて行けば
杉並区役所が見えてきますが、徒歩だと20分ほどかかる距離です。
公証役場でできること
公証役場でできることは大きく6つあります。
一般の人が公証役場を利用するケースとして一番多いのが
「遺言書の作成」を行う場合です。
遺言書には「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」の3種類あり、
その内の公正証書遺言と秘密証書遺言の作成で公証役場を利用します。
公正証書遺言は公証人が遺言作成者が聞き取った内容を書面化したもので、
3種類の遺言書の中で一番確実性が高いです。
公証人が作成するため無効となる内容が含まれず、
遺言書を開封・行使する際に家庭裁判所の検認が必要ありません。
ただ公正証書遺言の作成には、
遺産金額に応じて数千円から数万円単位の手数料がかかります。
また遺言書自体を公証人が作成するため、
遺言書の内容を完全に秘密にすることができません。
秘密証書遺言は自書した遺言書を公証役場で預かってもらうものです。
遺言書は自書するので内容は秘密にできますし、
公証役場に預けるので紛失や改ざんの心配がありません。
ただ公証人は遺言書の中身をチェックしないので、
無効となる内容が含まれる恐れがあります。
また秘密証書遺言の作成には11,000円の手数料が必要で、
開封・行使の際には家庭裁判所の検認も必要です。
ちなみに自筆証書遺言は自書した遺言書を自分で保管しておくもので、
作成に費用はかかりません。
しかし内容はもちろん遺言書自体が無効となる恐れもありますし、
紛失や第三者による改ざんの危険もあります。
開封・行使の際には家庭裁判所で検認を受けなければいけません。
定款の認証
株式会社を立ち上げる時に作成する「定款」の認証も公証役場の仕事です。
定款は会社の基本的な情報やルールを記載した書類で、
「会社の憲法」とも言われる重要なものです。
会社法という法律で法人の設立には定款の作成が義務付けられており、
特に株式会社を立ち上げる際には定款の認証が必要となっています。
ちなみに合名会社や合同会社、合資会社は定款の作成は必要ですが、
公証人による認証は不要です。
事業用融資に関する公正証書の作成
金融機関から小規模事業者や個人事業主が、事業融資を受けるのに必要な
連帯保証人を立てる際の公正証書の作成でも公証役場を利用します。
個人的な融資と違って事業融資は金額が大きく、
連帯保証人には多額の負債を抱えるリスクがあります。
事情を知らされないまま連帯保証人となって、
多額の負債を抱えるトラブルが多発しました。
そうしたトラブルを防ぐために、現在は事業融資の連帯保証人になるには
「保証意思宣明公正証書」を作成しなければならなくなっているのです。
要するに「個人で多額の負債を抱える覚悟で事業融資の連帯保証人になります」
という意思を示す公正証書を連帯保証人になる前に作るということです。
任意後見契約
任意後見契約を結ぶ際にも公証役場で公正証書を作成しなければいけません。
任意後見は、将来認知症などで自分が正常な判断ができなくなった場合に備えて
後見人を定めておく制度のことです。
認知症などで正常な判断ができなくなっているとは言え、
後見人を立てると自身の権利が大幅に制限されることになります。
任意後見契約を安易に結んだり、無理やり結ばされたりすることがないように
公正証書による契約が必要となっているのです。
現在の日本は超高齢社会となっており、
将来認知症などで正常な判断ができなくなるリスクは高まっています。
正常な判断ができなくなってから裁判所に後見人を決められるなら、正常な判断が
できている内に自分で後見人を決めておこうという人が増えることも考えられます。
今後は公正証書遺言の作成と並んで、
任意後見契約で公証役場のお世話になるケースが多くなるかもしれません。
執行証書の作成
裁判所の手続きを経ずに財産の差し押さえなどができる「執行証書」の作成も
公証役場で行えます。
個人財産は基本的に誰にも侵す権利がありませんが、民事訴訟や督促など
裁判所の判断によっては個人財産を差し押さえることが可能です。
執行証書は裁判所の判断に相当するもので、
執行証書があれば裁判所の判断を仰がなくても個人財産が差し押さえられます。
一般的には離婚時に執行証書を作成しておくと有効と言われているのです。
離婚すると元夫側から元妻側などいずれか一方からもう一方に対して
慰謝料を支払うことになるケースがあります。
また子供が居る場合には、子供を引き取った側に対してもう一方が
子供が成人するまで毎月養育費を支払い続けることになります。
しかし慰謝料や養育費の支払いが遅れたり、
最悪の場合は支払いが止まったりなど正しく履行されないことが多いです。
離婚時に慰謝料や養育費の支払いについて執行証書を作成しておくと、
支払いが遅れたり止まったりすると速やかに給料などを差し押さえられるのです。
事実を証明する公正証書の作成
公証役場は「事実を証明する公正証書を作成する」際にも利用します。
例えば、「○月○日時点で自宅の金庫にXX万円のお金が入っていること」などを
公証人に確認してもらって公正証書として残してもらうのです。
また裁判の証言予定者が後で証言を変える拒否するといったことに備えて、
事前に公証人に証言を聞いてもらって公正証書として残してもらうケースもあります。
時効が設定された契約で、時効の起算日を公証人に確定してもらって
公正証書で証明してもらうこともあります。
こうした事実を証明する公正証書を作成しておくことで、
後々にトラブルとなりうる芽を摘んでおくわけです。
まとめ
杉並公証役場はJR荻窪駅から徒歩1分のところにある「澁澤荻窪ビル」の4階に
入っており、区役所とは全く別の場所なので注意してください。
公証役場にお世話になるケースは多くないかもしれませんが、いつ利用しなければ
ならない時が来るか分かりませんから場所だけでも覚えておきましょう。